月曜ミステリー:『タムラの館~猫の女将が笑う夜~』

2010年12月6日月曜日

猫のタムラさん劇場


いらっしゃいませ・・・・・

こんな夜更けにさぞ寒かったでしょう

まあ、小説家先生なんですの・・・

取材旅行で・・・・

ここいらの土地はなあんにも無いですが・・・

ああ、昔話をね・・・

どうぞ、まずは宿帳をお書きくださいな

こちらのキッチンペーパーがお手拭きですから・・・




お部屋はそうですねえ、『寒桜の間』が空いております・・・

わたくし、この宿の女将でタムラと申します・・・

こんな田舎の宿ですから、わたくし一人で・・・

なんて冗談ですわ、部屋係も料理長もおりますゆえ、

安心してごゆっくりなさってください・・・

源泉かけ流しの温泉も小さいながらございまして・・・

効能は毛玉ケアです・・・



お食事は申し訳ありませんが、簡単なまかない食になります・・・

夜更けの急なお客様ですから・・・

カツオブシは削りたてをご用意しますわ・・・

はあ、写真撮影ですか

この宿を小説の舞台になさりたいと・・・

お気持ちはうれしゅうございますが、

写真だけはご勘弁を・・・

写っては困るものは何もないのですが・・・

写ったら驚くでしょうし、お腰を抜かされるのではと・・・


(しかし、小説家は女将のタムラを撮ってしまった)



おやおや・・・最近はデジなカメが流行と聞きますが・・・

その場で写真が見られるのですねえ・・・




人間が写っていないとおっしゃりますか・・・

どう見ても猫だと・・・

ですから申し上げましたでしょう、とても驚かれると・・・

しかしまあ、一夜の夢かも知れませんよ・・・

人の世ほど怖いものはございません・・・

せめて猫のお宿で疲れを癒していかれたらどうですか・・・

迷いの道すがら、不思議な想い出を作っても罪にはなりませんよ・・・




慣れればどこよりも落ち着く宿でございます・・・

さ、どうぞこちらへ・・・

そうそう、以前も作家先生がお泊りになられましてね、

ずいぶん有名になったそうですよ・・・


(小説家はふらふらと、すすめられるまま宿の奥へと入っていった。

その後、小説家は鳴かず飛ばずの純文学をやめ、

『もしも肉球部の女子猫がトラッガーの「にゃめんじめんと」を読んだら』

を書き、ベストセラー作家となった。)


タムラの館は、出世するんですよ・・・イヒヒ。女将のタムラが保証します・・・


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