蓮田英夫と夜明けの月

2008年2月25日月曜日

ペリカン日記

 明け方5時の目覚ましで起きる。
半端に閉められたカーテンの間に、欠け始めた月が僕を見下ろしていた。
寒さでぼんやりとかすみががった空気の中、月は眠たそうな表情に見える。
すっかり枯れた花が、まだテレビの近くにあった。僕は、花たちを硝子びんから抜き取り、捨てた。
花を飾る趣味は無かったが、彼女が言った最後の言葉を思い出し、買ったのだった。
 ―私が花だったら、もう、とっくに枯れちゃってる。あなた、植物枯らす人よね、きっと。
花を長持ちさせるという液体を花瓶に入れてみたけど、なぜだろう、本当に、すぐ枯れた。
植物枯らす人よね、ほんとそうよね、僕はCMソングのメロディに乗せてつぶやきながら、ゴミ袋の口を結び、上着をはおって外へ出た。
月は窓越しで見るより光がくっきりとしている。
「花の種でも買ってくるか」
月が一瞬、ゆれた気がした。どうせ笑っているんだろう。