蓮田英夫の文豪☆ライダー⑬

2009年1月12日月曜日

文豪の日記

相変わらず寒い札幌。蓮田です。

2月の末ごろになると、また市が主催の文芸賞の募集要項が配布されると思う。 これで3回目の応募になる・・・・。

10代が主人公の恋愛小説を手に取ると、今では「ハズカシイ」と思ってしまう自分がいる。
かつて、僕らがその世界の住人であったはずなのに。

彼の声が聞こえた。彼女と廊下ですれ違った。その瞬間を自分のものにできたことへの幸福。
やがて、一人から二人になった恋もあれば、一人のままいつまでも佇んでいた恋もあっただろう。

放課後、先生の説教があって、ついでに一緒に帰る友達もつかまらなかった。
曇り空と、妙な湿気を感じる。駅の自転車置き場は僕一人だった。
 自転車をこぐスピードをあげて、自分の部屋のマンガ本の続きを頭の中でめくりながら、さらにスピードをあげる。
踏切が見えた。もう、黒と黄色の棒が下りていた。やっぱり今日はついていない。開かないんだよ、ここ。
踏切の警告音といっしょに、雷の音が重なり始める。
雨に降られないうちに、家に着くと思ったのに。
自転車カゴに入れたカバンの、外ポケットからはみ出している単語カードを押しこむと、手の甲に雨粒が当たった。ボツン、ボツン、ボツンとその勢いはすぐ夕立ちとなった。
僕の髪も制服も、いたずらでプールに飛び込んだみたいになる。
指先が冷えて、ハンドルを握っているのがおっくうになってきた。
電車は右に、左に、また左に、過ぎて行った。

気が付くと、僕の頭の中のマンガ本は消えていて、傘のなかの彼女の後姿と、その傘は大きなネイビーのもので、彼女は誰かと歩いているシーンが放映されていた。
昨日封切の、僕だけが観客の、校門そばの道で。

僕は3年使っているネイビーの傘が好きだったが、今日はわざと持ってこなかったのだった。
今日だけ、嫌いになりたかったから。